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このページはあまり写真に詳しくない方にもそれなりに理解していただけることを意識して執筆しています。
その分、上級者にとってはまわりくどかったり、説明に正確性を欠く部分もあるかと思いますが、ご容赦ください。
はじめに
DCとの出会い
    機材一覧のページを見ていただければわかるとおり、わが家には多くのニコン製カメラ&レンズがあります。が、その多くはオヤジが70年代前半に買ったもので、もはやクラシックの領域に近づきつつあるものばかりです。
 私自身本格的に写真を撮ってみようという気になって以来それらの機材を借りては使っていましたが、やがて新しいレンズを使ってみたいという欲求も出てきます。そこに出会ったのが、双葉社から発行されている「季刊クラシックカメラ特別号 Nikon F100+ニッコールレンズ」というムックでした(1999年発行)。
 この本にはそれまでほとんど知らなかった最新ニッコールレンズが作例とともに多数紹介されていたのですが、中でもDCニッコールの作例にはかなり惹かれるものがありました。

 ところが、その一方でカタログや雑誌を調べているうちに、どうも自分はニコン的な描写を好きではないんじゃないかとも思いはじめていました。そうなると、他の同クラスレンズと比べても価格が高いDCニッコールには、なかなか手を出しにくくなってしまいます。使ってはみたいけれども周りに持っている人はいなのでインターネットで情報を探しましたが、ユーザー数自体が少ないのかあまり見当たりませんでした。
 なかには特徴を紹介しているところもありますが、作例写真は「こういうことができます」という機能の紹介程度で、作品としてのおもしろみがあまり感じられません。そんな中でようやく見つけたのが「花風情」というサイトです。ここにはDCニッコールで撮影されたという花の写真ばかりを掲載したページで、しかもそのどれもがこれまで見たことのない不思議な雰囲気をもっていたのです。

 このサイトに影響を受けてついに購入を決意し、2001年2月末にDCニッコール105mm f/2 Dを入手しました。135mmとどちらにするか迷いましたが、あまり望遠効果が強くなく使いやすい焦点距離だったこと、重量が135mmに比べはるかに軽かったこと、もちろん価格も安かったことなどから105mmの方をチョイスしました。


当ページについて(2002.4.6記す)
 

 購入してしばらくはテスト撮影に励みましたが、その結果わかったことは「すばらしくシャープな写真が撮れるレンズ」ということです。ところが、どう頑張っても「花風情」のような写真にはならないのです。かすりもしません。
  これにはいまだに悩んでいます。いまどき「シャープに撮れるレンズ」などゴロゴロしています。それ以外の個性を求めて買ったのに、そういう面を見せてくれることはほとんどありません。「花風情」にあるファンタジックな画と自分が撮ったものとの差はどこからくるのか? それを追求するのが当面の目標です。

 残念ながらというべきか、「花風情」には写真に簡単なコピー(タイトル)がつけられているのみで、撮影機材や条件、テクニックなどは一切語られていません。そこでこのレンズの存在自体をもっと知ってもらうとともに、自分なりに使いこなしの技を探りそれをまとめたいと考え、このページを作ることにしました。
 
 とはいうものの、私自身いまだに悩んでいる状態で、いますぐ紹介できるノウハウはありません。これからいろいろ試すなかで見つけたテクニックや情報を随時紹介したいと思っています。


そもDCニッコールとは?
レンズの描写とボケ(写真に詳しくない方のための予備知識)
 

 ところで「レンズ1本使うのにどこがそんなに難しいんだ?」と不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。たしかにそれが普通です。一般に「レンズの使いこなし」というと、「逆光に弱いから注意する」とか「描写の傾向がこういう被写体に向いている」とかいう話が主で、機材の操作とはあまり関係がありません。ところがDCニッコールはちょっと違うのです。

 ニッコールレンズの中には、カメラボディとの対応を表すAi-S、AiAFといった名称とは別に、機能を表す独自の名前がつけられているものがあります。中でも最も一般的なものが近接撮影用のマクロレンズ「マイクロニッコール」でしょう。
 DCニッコールの場合も同様に機能を表しています。DCとは"Defocus-image Control"の略で、フォーカス(ピント)があっていない部分の描写性を撮影者がコントロールできるといった意味です。一般的なカメラ用語でいうと「ボケ味」を変えられるということになります。ところで「ボケ味」とはなんでしょうか?

 詳しく話をするとたいへんなので(だいいちそんな能力もないので)いきなりはしょってしまうと、ピントが合っていない部分がどのように写るかということだといえそうです。

 ものがはっきり見える状態から徐々にピントずらしていくと、最初は輪郭があいまいになり、やがてだんだんと形が不明瞭になっていきます。完全な平面を撮影する場合は別ですが、ほとんどの写真ではそれが撮影された場面には奥行きがあり、ピントを合わせたい部分とその前後のピントが合わない部分が存在しています。そこで撮影時には「どこにピントを合わせるか」が重要になってきます。
 風景写真や記念写真では手前から背景までピントがあった(ように見える)「パンフォーカス」で撮影するのが普通ですが、逆に前後をぼかしてしまうことで余計なものを見せずに主要被写体だけを強調することもできるのです。
  このとき「ピントがあわない部分」の描写によっては写真全体の雰囲気を壊してしまうことがあるため「ボケ味が悪い」「ボケがうるさい」などといって嫌われ、レンズを評価する場合の大きなポイントとなってます(「日本では」という話もありますが)。

 ところがひとくちにボケ味といっても、その評価は簡単ではありません。ボケの効果は撮影距離や絞りの値によって変化しますし、背景や前景になにがあるかによって気になったりそれほどでもなかったりするからです。一定の条件の下で比較・評価することはできますが、だからといってほかの条件で撮影したときにもそれがあてはまるとは限らないわけです。また、どのようなボケなら「きれい」なのかということになると完全に主観の領域で、人によって評価が大きく分れます。

 ボケの味を左右する要素に「収差」があります。収差は本来「写りの良さ」にとってはじゃまな存在で、レンズの設計者にとって、いかに収差を取り除くかはこの世に写真用レンズが誕生して以来ずっとつきまとってきた問題です。
 ところがこの収差も、ある条件下で適切な量だけ現れれば写真に「えもいわれぬ」いい雰囲気を与えてくれます。これが俗にいう「レンズの味」の正体だと考えられているようです。


ご案内

「CAPA 交換レンズマガジン Vol.3」(株式会社学習研究社・2002年4月18日発売)の中に「馬場信幸が解説するレンズの味」というタイトルで、レンズの味とボケに関する記事が掲載されています。中には球面収差についての説明やソフトフォーカスレンズの効果、ミノルタの85mmF1.4リミテッドと従来レンズの違いなどに加えて、DC Nikkorに関する作例もあり、たいへん参考になります。


Defocus-image Control
   一般の一眼レフカメラ用レンズはフォーカス(ピント)と絞りの2つを調節できるように作られています。一部メーカーのオートフォーカス機では絞り調節用のリングが省かれていますが、これは絞りの操作をカメラボディ側で行うようにしただけで、絞りの機構そのものはレンズに組み込まれています。

 ご覧のとおりここにはボケを操作する要素はありません。言い換えるとボケの特性はそのレンズ独特の個性であり、利用者が積極的にコントロールするたぐいのものではなかったわけです。またボケのきれいなレンズを求めて何本ものレンズを買ったり、一見似たようなレンズをいくつも揃えて撮影条件に応じて使い分ける人がいるといった状況も、このような背景から生まれています。

 そんな中、世界で初めてボケの効果を積極的に作画に活かそうという意図で作られたのが、「DCニッコール」というレンズです。正式な名称は「AiAF DCニッコール」といい、ニコン製のオートフォーカス一眼レフカメラ用交換レンズで焦点距離105mmと135mmの2種類がラインナップされています(2002年4月現在)。開放F値は105mm/135mmともに2で、いわゆる大口径中望遠レンズに属します。

 DCニッコールの狙いは「ボケ味を撮影者がコントロールすること」にあります。もともと明るい中望遠レンズにはボケの効果を利用しやすいという基本的な性格があるわけですが、他の一般的なレンズではよいボケ味を引き出そうとしたらそれに適した条件を選んで使う必要があるのに対し、DCニッコールでは「撮影条件に(あまり)縛られずに好みのボケ味を選ぶ」ことができるのが大きな特徴といえます。
 ここで注意すべきなのは「ボケ」つまり「ピントが合っていないところ」の描写を制御するということです。ピントが合っている部分についてはニッコールレンズの基本であるシャープな描写でありながら、ピントの合っていない部分についてはいろいろな描写の傾向(ボケ方)を選べるレンズと考えればいいでしょう。


ソフトフォーカスレンズとの違い
 

  実はDCニッコールとよく似た機構を持つレンズは、以前からありました。ソフトフォーカスレンズがそうです。ソフトフォーカスレンズとは、「ピントは合っているのに全体には輪郭のはっきりしない、にじんだような写りをする」レンズのことで、ふわっと柔らかい雰囲気が出ることから特に女性のポートレイトや花の写真などに使われることがあります。
 もともと、性能がまだ低くシャープでクリアな写真を撮れなかった時代のレンズにとっては「ソフトフォーカス的な描写」は当たり前だったのですが、やがてレンズの性能が向上してこのような写真を見ることは減ってきました。要するにくっきりシャープに写るレンズを作ることがレンズの進化であったわけです。
  ところが、どのレンズもシャープに写るようになると、クラシックなレンズがもつ「シャープさの欠如」がこんどは独特の効果(味)として評価されるようになりました。
 そこでクラシックレンズ風の効果を再現すると同時に、その画面がにじむような効果がどれくらいかかるか、その強さをコントロールできるようにしたのがソフトフォーカスレンズというわけです。

 ではこれらのソフトフォーカスレンズとDCニッコールとの違いはどこにあるのでしょうか。それは効果が得られる範囲です。ソフトフォーカスレンズでは画面全体にその効果が現れるのに対し、DCニッコールの場合は「ピントの合った範囲はシャープなまま、前後のボケの部分の効果を変える」のを目的としているからです。

 ただし使い方によっては、DCニッコールでもソフトフォーカスレンズ同様の効果を得ることができます(と説明書には書かれています)。これはソフトフォーカスの効果もDCニッコールによるボケ味コントロールも、共に同じ原理を使っているためと思われます。ただ、応用のしかたが多少異なるためその効果にも違いがあるというわけです。

 実際、「花風情」に掲載されている作品の多くはソフトフォーカス的な効果が使われています。が、それと同時にこれまでソフトフォーカスレンズの作例では見たことがなかった不思議な効果が出ているものもたくさんあります。
 このサイトに出会ったことで、単なるボケのきれいなレンズではなく、またソフトフォーカスレンズやフィルターを使ったソフト効果とも違う、DCニッコールならではの描写があるのではないかと興味を掻き立てられたのでした。


歴史とバリエーション
発売時期
   残念ながらDCニッコールが登場したときのカタログ・資料の類いがないので正確なことはわかりませんが、「Nikon F100+ニッコールレンズ」に収録されている「Fマウントレンズ全リスト」によると、DCニッコールと名の付くレンズには以下の3本があります。
Ai AF DCニッコール105mm F2D
1993年 9月発売
Ai AF DCニッコール135mm F2S
1991年 4月発売
Ai AF DCニッコール135mm F2D
1995年12月発売

  発売時期からわかるとおり、最初に焦点距離135mmのSタイプレンズが発売され、しばらくして距離エンコーダ内蔵のDタイプにマイナーチェンジされています。いっぽう、その間に登場した105mmは最初からDタイプレンズとして登場しています。
 2002年現在は、105mmと135mmのDタイプがそれぞれ販売されています。私が所有しているのは105mmF2Dです。

仕様
   上記ムックによると基本的な仕様は次のとおりです。
 
画角
レンズ構成
最小絞り
最短撮影距離
フィルタ径
重量
105mmF2D
23°20’
6群6枚
16
0.9m
72mm
640g
135mmF2S
18°
6群7枚
16
1.1m
72mm
870g
135mmF2D
18°
6群7枚
16
1.1m
72mm
815g

 レンズ名からわかるとおり開放F値はいずれも2です。135mmはモデルチェンジでDタイプ化されただけでなく、かなり軽量化されていることがわかります。レンズ構成は105mm、135mmともよく似た変形ガウスタイプ(対称型)ですが、135mmのほうはいちばん前の玉が貼り合わせになっていて、その分レンズが1枚多く使われています。また105mm/135mmとも最後面に保護ガラスが1枚入っています。

外観の特徴と操作感

    レンズの仕様同様に外観も各モデルともよく似ています。ただし105mmでは前玉の位置が比較的奥まっているのに対し、135mmはかなり前方に出ています。鏡胴表面はニッコールの高級タイプレンズ独特の縮緬仕上げで、引き出し式のレンズフードが組み込まれていますが、このフードは浅めなので特に135mmのほうでは効果があるのか不安です。

 このレンズにはピント合わせ用のフォーカスリングと絞り調節用リングに加えて、さらにDCリングとAF/MF切り替え用のリングまで組み込まれていますが、外観はすっきりまとまっています。
 AF/MF切り替えリングは、リング上に配置されたボタンを押しながら回転させることでAポジション(AF用)/Mポジション(MF用)を選ぶことができます。距離表示目盛は窓の中に表示されるタイプです。
  フォーカスリングの先にはこのレンズ最大の特徴であるDCリングがあり、このリングを動かすことでボケ味の調節を行います。また、DCリングのほかにもうひとつ外観上の特徴があります。それはAF/MF切り替えリングとフォーカスリングの間にあるクロームシルバーのリングです。同様のリングはMF用レンズに受け継がれてきたものですが、AF用ニッコールレンズではDC105/135だけの特徴で、このクラス(焦点距離)にしては大きめの鏡胴をデザイン的に引き締めています。

 私はAFボディを所有していないため、AFのスピードなどはわかりません。前述のとおりAF/MF切り替えリングがあるためオートフォーカス時にフォーカスリングが回転することはなく、安定してレンズを支えることができるでしょう。AF/MFのモード切り替えもスムーズだと思います。MFでの操作に関しては、フォーカスリングは軽いものの感触はなめらかで、マニュアルフォーカス時の感触にこだわる方にもそれなりに納得できそうです。

 なお、フォーカシングはレンズの後群のみを動かすRF(Rear Focus)タイプで、フォーカシングにより全長が変わることはありません。

AiAF DC Nikkor 105mm F2D全景(保護用フィルタ装着)
上から順に、引き出し式フード、Defocus Contorl用リング、フォーカスリング、AFレンズではDCのみのクロームリング、AF/MF切り替えリング、距離表示窓、絞りリングと並んでいる。

実際の効果

 

 では実際にどのような効果があるかを具体例で見ていただきましょう。
 右の画像はギャラリーに掲載している紅葉の写真です(クリックすると大きなサイズで表示されます)。

 この写真は画面右上の紅葉を主要被写体として、左手前の紅葉は前景、右下の暗い枝の部分は、背景としてそれぞれぼかしています。

 次に下のふたつの画像をご覧ください。

 
作例1-a
上の画像の右下部分を拡大したもの。
 
作例1-b
DCリングの設定を変えて撮影したカットから拡大
    作例1-aは上のカットそのものの右下部分を拡大スキャンしたもので、作例1-bのほうはほぼ同様のフレーミングでDC効果を変えて撮ったカットからの拡大スキャンです。手持ち撮影なことと、スキャン範囲を正確に設定するのが困難なことでまったく同じ画面とはいえませんが、葉やシルエットになった枝の形からだいたい同じあたりが写っていることがおわかりいただけると思います。

 ここで注目していただきたいのは、背景にある紅葉や枝のボケかたです。どちらも元の葉や枝の形がよくわからないほどにボケていますが、作例1-aでは「融けるように」なだらかに崩れているのに対し、1-bのほうは魚のウロコでも貼り付けたかのような円形の光が散らばっています。これが「ボケ味の違い」です。

 DCニッコールでは、DCリングの操作ひとつでこのようなボケの違いを生み出すことができます。


DCリングの基本操作

DCリングの表示と設定

    DCリングは標準の状態(以下、当ページでは「ニュートラル」または「N」「Nポジション」のように表記します)を中心に、左右に目盛が設けられています。目盛はF側/R側の双方にそれぞれ2/2.8/4/5.6と記されています。
 設定を変更するには、リングについてるロック解除ボタンを押しながらDCリングを廻します。各目盛位置でロックされるため確実にその位置にセットすることができ、不用意に動く心配はありません。目盛はF側/R側とも5.6までですが、そこからさらに外へ廻すと、FまたはRの文字の位置まで動かすことができます。ここまでがDCリングの設定可能範囲です。

 F側に廻すことでピントが合っている部分より手前(近い)側のボケを美しくすることができ、R側に廻せば逆にピントが合っている部分より奥(遠い)側のボケが美しくなります。
 いいかえると、手前と奥の両方のボケを同時に美しくすることはできません。したがって、背景や手前に入れる添景などの画面構成を考えながら、どちら側にセットするかを決定することになります。

DCリングはF側に5段、R側に5段+ニュートラルの計11段のポジションがある。各ポジションでロックされるので、設定を変えるときは左に見えるロック解除ボタンを押しながら廻す。

ふつうのレンズとして使う

   DCニッコールはユニークな機能を持ってはいますが、決して特殊撮影用ではありません。DCリングを操作せず、ニュートラル位置にセットしたままの状態で使えば、ごく普通の105mm/135mmレンズとして使うこともできます。このときが最大の解像力を発揮します。

ボケを美しくする

   DCリングを動かすことでボケの効果(その強さ)を変えることができます。もっとも基本的な使い方は、レンズ本来のシャープな描写を保ったまま、ボケを最大限に美しくすることです。
 この場合、選択した絞りの値と同じ位置にDCリングをセットします。たとえば、絞りをF4で撮影したい場合は、DCリングを4の位置にセットします。被写体(ピントを合わせたい場所)の手前にあるものをきれいにぼかしたいのであればF側の4に、向こう側のものをきれいにぼかしたいのであればR側の4にセットします。
DCリングを絞り値と同じにセットすると、ピント位置のシャープさはそのままに、ボケを最も美しくすることができる。ピント位置より手前側のボケをきれいにしたいときはDCリングをF側に、向こう側のボケをきれいにしたいときはR側にセットする。

ソフトフォーカス的に使う

   設定した絞りの値より、DCリングの設定を大きくするとソフトフォーカス的な効果を得られることがあります。絞りが4の場合、DCリングを5.6あるいはFまたはR位置までいっぱいに廻しきった状態にします。
DCリングを絞り値より大きな値にセットするとボケ効果が最大となり、ソフトフォーカス的な効果が得られる(その分シャープネスは低下する)。

使用時の注意事項
事前テストでクセをつかんでおく
    DCによるボケ効果の変化をカメラのファインダー上で確認するのは非常に困難です。DCリングをリミットからリミットへと最大限に切り替えれば効果の違いが分かりますが、2〜3段程度の変化を確認することはムリといっていいでしょう。
 また、その効果自体も撮影距離や背景/前景などその場の条件によって強く現れたり、逆にあまり目立たなかったりします。したがってDC効果を活かした撮影を行うには、事前にテスト撮影を充分に行い、その傾向を把握しておくのが望ましいといえます。
 とはいえ、明確な撮影目的がある場合を除いて、日頃から充分にテストを行うというわけにはなかなかいかないと思います。少なくとも初めのうちは、いきあたりばったり、偶然のおもしろさを狙うといった感じになってしまうでしょう。
 「確実にワンショットを押さえる」ことを重視する方にとって、コストパフォーマンスの点ではあまりお薦めできないレンズといえそうです。

DCのセットはフォーカシング前に

   DCニッコールには、その機構上DCリングを動かすとピントの位置が前または後にずれるという特徴があります。このため、あらかじめDCリングを希望の位置にセットしたあとでピント合わせを行う必要があります。
 ピントの移動は、AFロック後にDCリングを動かした場合にも起こります。したがってDCリングを操作したら必ずピントを合わせなおすようにします。

AFかMFか?

   前述のようにDCリングを動かすとピントの位置が移動するため、DC効果を変えながら連続撮影する場合はそのたびにピント合わせが必要です。この場合いうまでもなくオートフォーカス機が有利です。

 その一方で、ボケを活かした作画の場合、主要被写体を画面の中央部から外したフレーミングを狙うこともよくあります。この場合、オートフォーカス機では測距フレームがある場所にしかピントを合わせることができないためフレーミングの自由が大きく制限されることになります。この点では、ファインダー上のどこでもピントを合わせることができるマニュアルフォーカスの方に分があります。

 きれいなボケを得たい被写体といえば、女性のポートレイト撮影や花のクローズアップ撮影が代表的ですが、ポートレイト撮影それも特に一瞬の表情を捉えたい場合にはAFで、一方、フレーミングを厳密に決めたい花の撮影などはピント合わせの手間を考慮にいれてもMFで、というように使い分けるのがよさそうです。

絞りの設定とDC効果
    DCリングの目盛は最大5.6で、そこからさらに1段廻したところまで使うことができます。5.6からさらに1段ということは絞り値では8に相当することになります。
 前述のとおり、DCリングを絞りと同じ値に設定することで解像力を保ったままボケを美しくすることができるわけですが、見方を変えれば、絞り値11や16に対応するポジションはないということになります。
 これらと、設定によってはソフトフォーカス的な効果を得られるという点や、設定を変更するとピント位置がずれるといった特徴を合わせて考えると、DCニッコールも多くのソフトフォーカスレンズ同様に、球面収差の量を調節することでその効果を得ているものと思われます。

 ここでDCリングの設定段数に話を戻します。段数の設定が5.6までしかないのは、球面収差の量はレンズの絞りを絞り込むことで減少するという性質から、絞り値が11や16になると収差そのものが減少してしまい、充分な効果が得られないということでしょう。FおよびR側のフルロックポジションは、絞り値5.6に対して、DC効果を1段分オーバーに設定できると考えられます。

 また絞り込むほど効果が減るということは、逆に絞りを開けて(絞り値を小さくして)使えばボケの効果を最大にできることになります。つまりシャープさを捨ててボケの効果を求めるには絞りを開放(F=2)にして、DCをFまたはR側にフルロックした状態で使えばよさそうだと推測できます。
 しかしこれまで述べたとおりボケの効果そのものが撮影距離等の条件によって変わってきますし、実際の撮影経験からいっても思ったほど「ソフトフォーカス的な写真」にならない場合があります。単純にソフト効果を求めるのであれば、ソフト効果フィルターを使ったほうが確実のようです。

 (ニッコールレンズにはソフトフォーカスレンズがラインナップされていません。強いて言えばニコン技術工房から発売されている「おもしろレンズ工房」のなかに「ふわっとソフト」というレンズがありますが、商品の性格上一般的な撮影に適しているとはいいにくい部分があります。詳しくはニコン技術工房のホームページニコンオンラインショップのページをご覧ください)。

 絞りについてはもうひとつ注意点があります。写真の基本として、絞りを開けて使うと被写界深度が減るという効果があります。わかりやすくいうと、見かけ上ピントの合う範囲(前後の距離)が狭くなるということです。
 このためボケを強調することばかりに気を取られて絞りを開くと、もともと被写界深度があまり深くない中望遠レンズですから、ピントの合う位置はごくわずかになり、その結果「確かにボケはきれいだけど、画としてのまとまりには欠ける」という写真を量産してしまいます。
 これまでの経験をまとめると、画面をうまく構成できるだけの被写界深度を保ちながら、ボケをどれだけ効果的に使えるかが、このレンズを使いこなす上での大きなポイントになるようです。

 「花風情」の一部に見られる極端にボケの効果を強調した写真は、どうやらDCリングをちょっといじった程度では撮れないようです。あれはDCの効果を知りつくした結果可能となる、ある意味「極端に誇張した」使い方であって、このレンズの本質とはややずれたところにあるのではないかというのが現時点の結論です。
 一方で、1本のレンズの可能性をそこまで引き出して作品を撮られた「花風情」の作者には、驚きとともに敬意を感じざるを得ません。

AE撮影はまず絞り優先で
   DCリングの設定は、絞りの設定値を基準としているため、状況に応じて絞りが変化することがあるシャッター速度優先オートやプログラムオートモードで撮影した場合には、意図したとおりのDC効果を得られない可能性があります。
 これを避けるため、絞りの値が常に一定になるように、AEならば絞り優先オート、そうでなければマニュアル露出で使うことをお薦めします。
 私の場合、シャッター速度優先やプログラムオートの機能をもつカメラを持っていないので、実際にどの程度の食い違いが起きるのかわかりませんが、少なくともそういう可能性があるということは念頭に置かれて、DCの効果を体験的に把握するまでは絞り優先オートやマニュアル露出を使われるのがいいでしょう。その上で、多少の差は問題なしと判断されたのであれば、もちろんシャッター速度優先やプログラムオートで使われてもかまわないと思います。  
 
番外篇−CAPA2002年11月号附録「レンズテイスティングBOOK」を読む


実践テクニック (制作中)
製作が進んでいませんが、デジタル一眼レフ(D100)による作例をいくつかオンラインアルバムに掲載していますので、ご覧ください。>>Coppermine版 Galleria G 「花」
ソフトフォーカス風に攻める

 

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