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FM3Aを買わないワケ

 

 ニコンからFM3Aが発表されて約1年、実際に製品が世に出て既に半年以上が経過した。その間いろいろ考えたが、いまだに購入に至っていない。いや、いずれ買うであろうことは分かっている。それはFEが壊れたとき。そうでなければ必要ない。なぜかというとそれはFM3AがFMだからである。
 そのこころは・・・。

FMかFEか

 NewFM2生産終了の噂が流れた頃、同時に「FE3が出る」という噂があった。実際にFM3Aが登場したときも、またいまだにときどき「FE3のほうが名前としてふさわしい」という意見を見かける。
 なるほど露出メーターとか補正ダイヤルのレイアウトだとか、機構的にはFE系を名乗るほうがふさわしそうにもみえる。だが設計思想とそれがどのように形に現れたかを見ればやはりこれは「FM」に違いないと思うのだ。
 その例を挙げてみよう。

やはり使いにくい露出補正ダイアル

 AE機には露出補正という機能が付き物である。そしてFM3Aは(F3やFE系も同じだが)この露出補正を巻き戻しクランクと同軸にあるダイアルで行う。操作はリングを引っ張りあげて廻すという方式でなかなかスムーズにはいかない。
 要はこの「露出補正」をどう考えるかということなのだが、フィルムの実効感度を考慮してあらかじめ調節しておくというのなら、フィルム交換ごとに調節するだけでいいからダイレクトな操作は不要。よってこの位置と操作性でかまわない。
 また、シーンごとに露出補正を考える人でも、フィルム1本ぐらい同じ露出でさっと撮りきってしまうというのなら上と同じで、やはり問題ない。
 そして常に入射光式露出計を使うポートレートやブツ撮り専門カメラマンなら、そもそも内蔵露出計を基準にした補正など不要だ。

 しかし我々アマチュアはあまりそういうことはないのではないか。内蔵露出計を使い、カットごとに被写体の反射率を考え、必要に応じて適宜露出補正をかけるほうがふつうだと思う。その場合、カメラを構えたまま操作できないFE系ボディの露出補正ダイアルは決定的に使いにくい。

使えそうにないAEロック〜1

 露出補正ダイアルは使わずAEロックで済ませるひともいるかも知れない。そういう人は右手親指で押せるようになったFM3Aのボタンを歓迎するだろう。だが個人的にはコレがだめだ。理由はAEロックの機能自体が中途半端なうえに、ボタンの操作も中途半端に思えること。
  主要被写体を測光してAEロック〜構図を変えて撮影、という手順は主要被写体と背景の明るさの関係(逆光か、とか)にしか注目していない。反射光式露出計のはじき出す標準測光値(出た目)は被写体の色に左右される以上、AEロックした状態からさらに色に応じて補正が必要なはず。
 しかし、FM3Aではこれができない。いやできるのかもしれないが、AEロックボタンを押した状態で露出補正ダイヤルを廻すのは速写性に欠け、現実的ではない。そもそもこちらはあの露出補正ダイヤル自体を否定しているのだ。

使えそうにないAEロック〜2

 「季刊クラシックカメラ特別号 FM3Aバイブル」によると、FM3AのAEロックボタンは、押している間だけ露出(正確にはシャッタースピード)がロックされるらしい。ハイ、これで決定的になった。
  親指で押している間だけロックがかかるという方式(ここでは「プッシュ−ホールド式」と呼ぼう)はそもそも手動巻き上げになじまない。巻き上げのたびに親指はAEロックボタンを離れ、巻き上げレバーを動かす。一方、AEが働いているということは、その間構図がずれると測光値が変わる可能性をはらんでいる(光線状態は変わっていないのに)。つまり同じ露出設定で撮り続けることができないわけ。
 息を止め、ぴくりとも動かず完全に同じ構図を保ったとしても、AEロックはそもそも「測光時とは構図を変えて撮る」ためのもの。AEロックボタンから指が離れた時点でその時意図していた露出とはずれて「その構図での出た目」になってしまう。
 たとえば撮影会でモデルの顔に露出を合わせてAEロックすれば、自分がいろいろ動き回っても背景の明るさに引っ張られて露出が変わることはないが、それも1カット撮るだけの間。ひとたび指が巻き上げレバーに向かえば、そこでその露出はいったん終わり、やりなおしになってしまう。

 これを解決するには親指をAEロックボタンから放さずに巻き上げる必要がある。つまりモータードライブユニットMD-12の導入だ。ついでにいうとモータードライブによる連続撮影では、そのつど露出を合わせてくれるAEが有効だ。とするとFM3AのAEはMD-12と補完しあってこそ完結するものと考えられる。
 もしボディのみで考えるならプッシュ−ホールド式ではなく、「押してロック〜もういちど押して解除」の「プッシュ−プッシュ式」が必要だったのではないか? これなら巻き上げている間も同じ露出で固定されているから、意図した露出で撮り続けられる。

FM3Aの本質

 ここまでくると、こういう人もいるだろう。『そんなめんどうなこと考えるより、マニュアル露出で撮った方が早いよ。全速ハイブリッドで、シャッターダイヤルひとつで切り替えられるんだから』。
 ごもっともな意見である。

 だから、なのだ。
 このカメラの本質はAE撮影ではなく、マニュアル露出にあるというのは・・・。
 開発陣は他のだれよりそれが分かっている。がゆえに「FE3」ではなく「FM3A」。「A」が添え字で小さいのはその意図するところの現れなのだと思う。

・・・で、なにが欲しいのか?

 と言う具合に並べてきたところで、ではなぜマニュアル露出を本質とするFMではだめなのかということだが、その答はこうだ。「EV値の微調整が効かないから」。つまり1段ごとのシャッター速度では微妙な露出調整ができないのがイヤなのだ。

 これにはおそらく次のような反応があるだろう。『絞りで調節できるじゃないか』と。

 これがダメなのである。いやソレ自体がだめなのではない。シャッタースピードでも調節できたほうが調整幅が広がって望ましいという意味だ。

 話がちょっとそれるが、F3+DCニッコールという組み合わせを使っていると絞りの使いこなしにはかなり頭を悩ませる。露出の微調整を絞りでやると(そっちのほうが絶対早いわけだが)、構図は決まっていていい感じのはずなのに、あがりを見るとピントの合っている範囲が狭すぎて画としてまとまりに欠けるカットを量産してしまうはめになった。
 DCニッコールで 「ボケの具合を保ち、なおかつ被写界深度をこれだけ稼ぐ」という目標を立ててしまうと、絞りによる露出の調節はかなり制限される。そのとき1段づつの設定しかできないシャッター速度ダイヤルではダメなのだ。

 『ではAE+露出補正で』。もちろん、こういきたいところだ。もともとワタシ自身がちがちのメカニカル礼賛派ではない。電子制御シャッターで1/2や1/3段が正確に制御できればいうことはない。
 が、しかしF3の露出インディケーターと露出補正ダイアルでの露出補正操作は苦痛。ひるがえってFM3Aでは、インディケーターの問題は解決されるが、露出補正ダイアルはF3と変わりない。

 そこで浮かびあがるのは、『シャッター速度で1/2段が使えたら問題は解決する』というしごく簡単な事実だ。

究極のFM・・・その形

 露出補正が使いにくいのならAEはいらない。電気系は測光部だけ。あとはフルメカニカル駆動。いざというとき電池も不要で、微妙な露出コントロールを可能にするカメラ。これこそ私が個人的に理想とする「FM」である。究極のFMという意味をこめてここではFM-Ultimate、略してFM-Uと呼ぼう。ニコンUにならっていえば、『「メカニカルSLRを求めるあなた」のためのFM』だ。

 FM-Uのおおまかな仕様を整理すると、次のようになる。

  1. FM系のコンパクトボディ
  2. フルマニュアル機
  3. 上は1/4000secまで、中間速も可能なメカニカルシャッター
    1/4000secなんて使わないとのたまう人も多いようだが、出た目で1/1000secから2段アンダーに補正できると考えればけっこう意味はあると思う。
  4. FE系の追針式露出メーター
  5. 測光系は微妙な露出コントロールを活かすため、できれば中央重点とスポットの選択式。
    OM-3的マルチスポットでもいいが、電気じかけが複雑になりすぎるなら、F3のようにスポット性の強い中央重点のみでも可

 こんなんだったら真っ先に飛びつくはずである。自信はあるよ、ワシ。

余談

 ところで、スペックの具体的な部分は置いといて、コンセプトのエッセンスだけ抜き固めるとコレ何かに似ていないだろうか。

 『比較的コンパクトなフルメカニカルのマニュアル機で中間シャッターが使える・・・』

 そこに見えるのは実はニコンF2ではないだろうか?
 たしかにボディはFMほど小さくないが、今のAF一眼に比べればコンパクト。交換可能なファインダーにはF3的な中央重点測光が組み込まれていたら・・・?。

 プロユーザー向け市場をデジタルSLRに明け渡した次のFが、より銀塩写真愛好家に向けてフォーカスしてくるとしたら、このような形であってもおかしくないと思うがどうだろう。
 果たしてその答が得られる日はくるだろうか?

2002.2.28(4.5改訂)

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