[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック


第四夜 F3ショック!

次のページへ進む前のページに戻るSSPトップに戻る

 ふだん使っているカメラは20年以上前のニコンFEという機種なのだが、ペルセウス座流星群のときは父親が所有しているニコンF2のペンタプリズム部分をウエストレベルファインダーに交換し、焦点距離=24mm・開放F値=2.8のレンズを持ち出した。わざわざF2を使ったのには理由がある。

 それはカメラのポジションだ。長時間露光では三脚の頑丈さが命。ふだんの撮影にはだいじょうぶな三脚でも、数分間露光するのはあたりまえの星の撮影では気を使う。いつも使っているのはベルボンのマウンテンチェイサーIIというヤツで、小型軽量な半面がっちりした作りという点ではやはりハンディがあるのだ。
 脚を伸ばさずに使うことでそれを補ってやろうというわけだが、そうするともうひとつの問題が持ち上がってくる。小型の三脚を脚を伸ばさずに使うということは、ローポジションから空に向かってカメラをセットすると、ファインダーを覗くのが辛いのだ。そこで父親所有のウエストレベルファインダーがあれば、上から覗けて楽だろうと考えたわけである。

 ところが理屈の上ではこれで万事OKのはずだったのだが、実際に使ってみるといまいちなのが判明した。問題は、まずF2のファインダーが暗いこと。覗いても星がどこにあるかわかんないのでフレーミングできないのである。これならFEのほうがまだよく見える。これはおそらく、周囲の明るさも関係していると思う。
  夜とはいえ月明かりがあると、ファインダーの脇から入ってくる光のせいでスクリーンが見づらくなっているのではないか。これが同じ上から覗くタイプでも高倍率ファインダーであればアイカップに眼をくっつけられるのだが、ウエストレベルの場合はホントに上からスクリーンを見るだけなので余計な光まで入ってきてしまうのだろう。
 もうひとつの心配は夜露である。ウエストレベルファインダーは上ぶたをパコンと開ければあとはすぐにフォーカシングスクリーン。F2の場合はこれが単に落とし込んであるだけなので、夜気温が下がって夜露が降りてくるとボディ内の結露が心配だ。もちろんゴミやホコリも入るだろう。となるとメンテナンスの手間がバカにならなそうである。
 これも高倍率ファインダーがあれば解決しそうだが、さすがに20年以上前の機種の特殊なオプションが手に入るとは思えない。というわけで電池の心配がないという点でうってつけのF2も、実際にはいまいち実用的ではないという結論に達した。

 そうこうしているうちに、ちょっとしたトラブルに見舞われることになった。FE用に使っていた純正スピードライトが故障し、ついでにFEにもフィルム給送トラブルが起きたのだ。サービスセンターに持ち込んで見てもらうと、スピードライトはもはや修理不能。FEのほうは機械的には問題なさそうなのでしばらく様子を見ては、という診断が下った。
  そこでとりあえずパナソニックのストロボを買うことにしたのだが、心配なのはボディのほう。New FM2が現役モデルだというのはパーツ供給の点で心強いが、それでもここで壊れたら修理が効かない可能性はある。余裕があればなにかボディを一台調達せねば・・・。

 で、ストロボを買いにいくついでに、カメラを物色する。実はこのとき、多少値段は張るがEOSの1Vが気になっていた。というのもカタログに「後幕保持電流が不要」という記述を見つけたからだ。よく見てみるとEOS-3のカタログにも同じようなことが書いてある。これは、ひょっとして長時間露光向きかもと思い店員に訊いてみたが、まったく知らなかった。ということは、それほど話題になっていない=たいした効果はないということか・・・。
 それにここでEOSのボディを買うとEFマウントのレンズも買わなければならないので、資金的にもつらい。そんなわけでEOSに見切りをつけて、F5やF100の感触を見る。そしてふと振り返るとそこにF3HPがあったのでついでにそれもちょいと覗いてみると、その瞬間ビィーン!と来るものがあった。「見やすい・・・」。ハイアイポイントだから実際はオリジナルのF3より倍率が低く小さいはずなのだが、覗いてみると今まで見たどんなカメラより大きく明るく見やすいファインダーがそこにはあった(そんな気がした)。

 実はそのときまで自分の中ではF3というのはたいして気になるカメラではなかった。最近のクラシックカメラブームもあって世評では銘機ということになっているが、多くのユーザーの間で言われているように絞り優先オートで使うと露出補正などの操作がやりにくいのが歴然だ(操作系のレイアウトがFEに似たところがあるのですぐに想像がつくのだ)。要するに積極的にAEを取り入れながらそれを使いこなすためのユーザーインターフェイス(そんなことば当時ほとんどだれも知らなかったはずだが)を提供しなかった、志の低い中途半端な機械だと思うのだ。
  そもそも、ニコンのFひと桁モデルというのは常に前の機種のネガティブな部分を潰す改良が主で、時代を本当にリードするようなものは作ってこなかったように思える。しかし、実際に手にとってファインダーを覗いてみると、そんなことどうでもいいじゃんと思わせるだけの魅力があるのもわかった。
 というのも、天体写真なら露光時間の調整だけで、露出補正なんか最初からしない。それより、TIMEモードにすればシャッターは機械制御で電池喰わないし、ミラーアップもできるから(天体撮影には)無敵よんというよことになってしまう。そこで、これまで考えてもいなかったF3HPという選択肢が急浮上してきたのだった。

 実はほかに考えたものがなかったわけでもない。ひとつはペンタックスのLX。F3と同期の1980年生まれで、全体の印象はともかくスペック的にはF3にちょっと似ている部分もある。もうひとつはコンタックスのRTSIIIだ。どちらも機械シャッターが使えるイコール長時間露光でも電池の心配がないというのが共通点だ。
 しかし、うちにはペンタックスのレンズがない(正確にはパンケーキ一本とベス単をKマウントに組み込んだ改造レンズの2本があるが)のでこれも新調になる。しかも電子制御シャッターから機械シャッターに切り替えるにはバッテリーを抜かなければならないらしく、これはめんどうだ。一方コンタックスのほうはレンズが4本ほどあるが、世間の噂を聞いたりうちにあるS2bを見ているとどうもボディはニコンのほうがよさそうだ。New FM2/Tと比べると見た目の高級感は勝っているのに、巻き上げたりシャッター切るとFM2/Tのほうがいい感じなのである。ついでにいうとRTSIIIはやたらとでかくてふだん持ち歩く気にはちょっとならないがF3ならなんとかなる。もちろん家にある手持ちのレンズ群が(かなり古いけど)そのまま使える。

 ・・・などなど逡巡しているうちに、8月末になってF3の製造中止という噂が流れだした。この春ラインナップを縮小したばかりだし、去年は雑誌で「できる限り作りつづけたい」といった発言していたのにと驚いたが、2000年10月末までに4000台を受注してそこで製造中止と公式発表が行われてしまったのではどうしようもない。
 これでF3人気がまた上がって最終生産分はコレクターにしまい込まれるに違いないと思うとくやしいので、多少の使い勝手の悪さには眼を瞑りつつ、ここで一台押さえておこうという方向へ急激に舵を切ることにしたのだった。

2000.12.1