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長時間の露光が必要な星の撮影にはしっかりした三脚が欠かせない。といってあまり重いものは持ち運びもたいへんだし、金もかかる。なにかいいものはないかなと思っていたところへ出会ったのがマンフロットの三脚だった。
地方のカメラ店に置いてある三脚といえば国産品がほとんどで、海外製はあまり見当たらない。それでも、ブランドイメージのせいかフランス製のジッツォ置いてあるところはあるが、マンフロットの実物を見たのはこれがはじめて。
輸入品にもかかわらず雲台つきで2万円という価格に驚き、インターネットで情報を探したりパンフレットを眺めてみたが同じ品番(#344Bという脚と#329という雲台の組み合わせ)のものが見当たらない。たぶん型落ちで安くなったのが流れてきたのだろうと思った。
マンフロットといえば、造りや使いやすさの割に価格が安いという評判で、特にローポジションもいける055Cあたりがネイチャーフォト派に人気のようだが、そっち方面はもっとコンパクトなマウンテンチェイサーIIがすでにあるので、まあいいかということでこいつを買うことにしたのが昨年(2000年)の秋。
ちなみに後ほどわかったのだが、この組み合わせは型落ちなどではなく、まったくの新製品だった。機能はベーシックだけれど基本がしっかりしたもの求める人をターゲットした製品なのだろう。
さて、実際に使ってみると造りは確かによさそうだ。
クイックシューつきの3D雲台の動きはけっこうなめらか。ワンタッチで脚をロックできるレバーは使いやすそうだし、冬の夜に手袋をして操作するのにもうってつけのビッグサイズ。
おまけに3本の脚のうち2本にはウレタンのパッドが巻いてあって、手袋なしで直に触れても冷たくないという天体撮影にはお誂え向きの仕様だ。
ほかにも見所はあって、まずパン棒のハンドルが太くて扱いやすい。締めるのも緩めるのもちょっとの力でOK。それから雲台に水準器がついているので、前後左右の水平がすぐに出せる。
そして3つの軸それぞれに角度目盛がついているので狙った星の方向に向けやすいのである。
それにもうひとつ見逃せないのがイタリア製というところ。なにせワシのメインカメラであるところのニコンF3はイタリアの工業デザイナー、ジョルジェット・ジュジャーロのデザインだ。その足もとをイタリアのマンフロットが支えるというのはいい組み合わせではないか(さらにこれらを運ぶのはフランスのプジョーなのだが、106のデザインにはもちろんイタリアンカロッツェリアの大御所ピニンファリーナの息がかかっている)。
ところがしばらく使ってみるとそれでもいろいろと限界があるのがわかった。最初は最適と思えた雲台の使い勝手が実はあまりよくない。
ふつうに風景写真など撮っているぶんには特に文句もないのだが、ヘッドの可動範囲の設定とパン棒のレイアウトという構造的な問題でアングルが制限されてしまうのだ。
具体的にいうと仰角がとれない。見た目の感じでだいたい40度ぐらいまでしかいかないようだ。ふつうの風景ならこれで充分なのだろうが、こっちは頭のてっぺんのほうへも向けたいという欲望を秘めているのだ。
反対に俯角のほうは90度まで行けるので、下の方に向けるのは楽だ。コイツ足下見やがって。
そこでまず考えたのは前後逆に使うという方法。つまりティルトのパン棒を手前ではなく向こう側に持っていく、あるいはクイックシューごとカメラを引っこ抜いて前後逆に付けてしまおうということだ。これなら俯角90度が一転して、上に向けられる。ファインダーをのぞき込む姿勢が辛いが、こういうときのためのアングルファインダー。せっかく買ったのだから使わない手はない。
しかし実際にやってみるとやはりレンズの下に伸びたパン棒を右手で操作するという不自然さは否めなかった。ま、緊急用としてはなんとかなるといったところか。
これだけならまだよかったのだが、実はもっと重大な問題もあった。ローテーションの方向である。カメラの左右方向の水平を決めるロール方向の可動範囲は、左は90度まで倒せるのに右は30度ほどしかないのだ。
ローテーション用のパン棒は右手で操作するので回転角に制限があるのは当然なのだが、これは迂闊だった。なぜかというとカメラを縦位置にできないのだ。
もちろん左に傾けても縦位置になるのだが、そうすると大きいレンズをつけたときに重みでカメラが回転し、ネジが緩んでしまうのである。高い金出して買ったDCニッコールがズリっと下を向いたときはホントに冷や汗かいた。
これを避けるには右側へ倒せばいい。そうするとカメラが回転しようとしてもネジを締める方向なのでかえって締めつけが強まるという理屈だ。ところがこの種のパン棒が3つある雲台ではそれに制限があるのだった。
これがマウンテンチェイサーIIなら、もともとロール方向への回転がない代わりにダイヤルロックひとつで雲台のさらにてっぺん部分だけ右へ90度倒せるようになっているので問題ないのだが、3D雲台を使うのは初めてなのでこんな制限があるとは気がつかなかったのである。
もちろん仰角問題のとき同様、前後逆にして使うというのをまっさきにトライしてみた。しかしこれはアカンかった。ティルト用のパン棒とレンズが干渉してしまうのだ。
ティルト用のパン棒は本来左斜め手前やや下に出ている。これを前後逆に使うと右斜め向こうやや下に出る形になる。
ところがさらにそこからローテーションで右へ90度傾けるとちょうどレンズと当たる位置に来てしまい、口径の大きなレンズだとぶつかっちゃうんである。
もちろんパン棒の操作もしにくいので、花のマクロ撮影なんかやった日には不便でしょうがない。さぁ困った。
解決策はひとつ。もっと使いやすいヘッドに交換してしまうことだが、いったいどれを買ったらいいのかが問題。#344Bのネジ穴は洋モノらしくUNC 3/8サイズなのも要注意だ(ふつうのカメラは1/4)。
有力候補としてまず考えたのは同じマンフロットの#410「ジュニアギアヘッド」だ。これも三軸に動く3D雲台だがパン棒がないのが特徴。パン棒がなくてどうやって動かすかというと、実は天体望遠鏡みたいな粗動/微動という仕組みがあるらしい。
簡単にいうと、粗動というのは目標物を視野に入れるための大きな動きで、微動というのは文字どおり微調整のこと。星の場合、粗動でまずおおまかに目標を捉えておいて、そこから星の動きに合せて微動で追いかけていく。
実はジュニアギアヘッドの現物はいまだにみたことがないのだが、理屈は同じで、おおまかに方向を決めたらあとはパン棒の代わりに付いているハンドルをグリグリとダイヤルのように廻してでビミョーに調整するらしい。いかにも風景写真にピッタリそうなマニア好みの香りがするシナモノである。
ただ、いかんせんコイツは実売2万5千円程度とややお値段が張るのがイタイ。高級雲台として見ればそう高くもないのだが、三脚+雲台のセット以上になってしまうのはちょっと気おくれがする。それに現物見てみないとまたどこか不都合が出てくるかもしれんし。
もうひとつの策としては自由雲台(ボールヘッド)という手もある。こいつはなまえのとおりいろんな方向に簡単に向けられるので便利だ。
ただし自由が効くぶん微調整がしにくい面もあって、特に水平を出すのは難しい。#329で水準器付きの便利さに慣れたのでよけいに不安だ。
それに基本的な構造だけでなく、製品選びも重要だ。加工精度が良くないと締めつけにやたらと力が必要だったりして締めたつもりが動いてしまったりと、使い勝手が悪いものもあるようだ。うーむ、どうしよう。
ついでにいうとボディにF3を使う以上、クイックシューはぜひ欲しい。内蔵露出計が中央重点測光でおまけにオーバー/アンダーの振れが読みにくいF3では三脚にカメラをセットする前に露出を決めておく必要がある。被写体がフレーミングの中心すなわち主要測光範囲にあることのほうが少ないから、カメラをセットしたあとでは最適な露出が測れない可能性大なのだ。
かといってフレーミングを決めたあとにカメラを雲台から外していたのでは、うっかり三脚ごと動かしてしまいせっかくの苦労が水の泡ということにもなりかねない。
そんなら単体露出計使えばという話もあるが、マクロ撮影やPLフィルタを使うとなると補正がめんどくさいのでTTL測光は捨てがたいのである。
そんなときクイックシューがあれば、フレーミングを決めたあと光が変っても、さっとカメラを外して測光をやりなおし、またセットできる。
これは星の撮影にも応用がきく。暗闇の中でレンズ交換したりするときに、三脚を蹴飛ばしたりする可能性を減らしてすばやく確実に作業できそうだから、ぜひ早急に入手したいアイテムといえる。
そんなわけで雲台+クイックシュー(場合によっては水準器も)が第二次備品調達計画のターゲットとなった。
11月の獅子座流星群は、流星嵐になるかもというほどの大出現が期待されている。それまでになんとかしなければ・・・。
2001.11.1
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